
ご家族で介護に向き合っている皆さま、そして、仕事や育児と並行して親御さんのサポートをされている皆さま、毎日本当にお疲れ様です。
今回は「ご家族向け・やさしい介護のヒント」として、仕事や育児と介護を同時に担う「ダブルケア(または仕事と介護の両立)」についてお話しします。
私たちケアマネジャーの事業所を評価する国の基準(特定事業所加算)には、「ヤングケアラー(日常的に家族の世話をする子ども)」への支援が含まれています。ニュースでもよく耳にする言葉ですが、現場で日々活動している私の実感としては、「仕事(や育児)をしながら親の介護をしているダブルケアラー」の方のほうが圧倒的に多く、切実な悩みを抱えているケースによく直面します。
「親にはサービスを嫌がられるし、経済的な余裕もない……」 そんな板挟みになって、一人で抱え込んではいませんか?
今回は、現場のリアルな経験と「国が定めている法的な支援策(根拠)」を交えながら、ご家族が倒れないためのヒントをお伝えします。
「サービスへの抵抗感」という最初の壁
仕事と介護の両立において、最初にして最大の壁となるのが「本人(または他の家族)が介護サービスを使うことに抵抗を示す」という問題です。
「他人が家に入るのは嫌だ」 「デイサービスなんて年寄りの行くところだ(自分はまだしっかりしている)」 「家族が看るのが当たり前だろう」
こうした声に押され、ご家族が無理をして仕事を休んだり、睡眠時間を削ったりして対応してしまうケースは本当に多いです。ケアマネジャーとしても、ここを解きほぐしてサービスに繋げるまでは非常に苦労するポイントです。

私たちケアマネは、ご本人の事だけではなく、介護するご家族のことも考えて、支援策を検討しています。
💡 解決のヒント: 「介護」という言葉を使わず、「お試し」や「家族のため」という理由付けを活用しましょう。 「お母さんがデイサービスに行ってくれると、私が安心して仕事に行けるから助けてほしい」とお願いする形をとったり、まずは「お風呂の工事(住宅改修)」や「手すりのレンタル(福祉用具)」など、人が介入しない物理的なサービスから始めて関係性を築いていくのがコツです。
「経済的な不安」を軽減する公的制度
サービスを使いたくても「親の年金も少なく、自分の生活もある」「仕事を休むと収入が減る」という経済的な理由で踏みとどまっている方も多くいらっしゃいます。 しかし、介護保険や雇用保険には、ご家族の経済的負担を軽減するための法的根拠に基づいた制度がしっかりと用意されています。一人で諦めず、まずは以下の制度が使えないかケアマネジャーや行政に相談してください。
① 介護保険制度による負担軽減策
- 高額介護サービス費 1ヶ月の介護サービス利用者負担額が上限を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。所得に応じて上限額が設定されているため、青天井で費用がかかることはありません。(根拠:介護保険法 第51条)
- 特定入所者介護サービス費(負担限度額認定) 住民税非課税世帯など所得が低い方を対象に、ショートステイや施設入所時の「食費・居住費」の負担を大幅に軽減する制度です。
- 市町村独自の減免制度 本当に生活が困窮している場合、行政(市町村の窓口)に相談することで、生活保護に至らなくても独自の減免措置や「生活困窮者自立支援制度」を活用できる場合があります。私も担当ケースでよく行政と掛け合います。
② 雇用保険(仕事との両立)による支援策
- 介護休業制度・介護休業給付金 要介護状態の家族1人につき、通算93日まで(最大3回に分割可能)仕事を休むことができる法的な権利です。休業中は、雇用保険から休業開始時賃金の「67%」が給付金として支給されます。(根拠:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)
- 介護休暇 休業とは別に、家族の病院付き添いやケアマネとの面談のために、年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)まで、1日または時間単位で取得できる休暇制度です。
絶対にやってはいけない「介護離職」
ダブルケアラーの皆さまに一番お伝えしたいのは、「絶対に、突発的に仕事を辞めないでください」ということです。
「自分が辞めて家で看れば、介護費用も浮くし丸く収まる」と考えてしまう方がいますが、これは非常に危険です。 介護はいつまで続くか分かりません。仕事を辞めて社会との繋がりが絶たれると、収入が途絶えるだけでなく、ご家族自身の精神的な逃げ場がなくなり、結果的に共倒れ(介護うつや虐待)に繋がるリスクが跳ね上がります。
国も「介護離職ゼロ」を掲げ、上記のような休業制度を整備しています。仕事を辞める前に、まずは「介護休業」を取得し、その休んでいる期間を使って「自分が仕事をしながらでも回る、介護の体制(ケアプラン)をケアマネと一緒に作る」ことに専念してください。

まだ介護サービスを利用しておらず、ケアマネもいないのであれば、地域包括支援センターでも相談にのってくれます。
まとめ:あなたは一人ではありません
親を大切に思う気持ち、そして仕事や子育ての責任感。ダブルケアラーの方は、本当に真面目で、すべてを一人で背負い込んでしまいがちです。
- サービスへの抵抗感は、焦らず少しずつプロを介入させる
- 経済的な不安は、行政の減免制度や高額介護サービス費を活用する
- 仕事は辞めず、介護休業制度を使って「プロに任せる体制」を整える
私たちケアマネジャーは、ご本人だけでなく、「ご家族の生活と人生を守ること」も大切な仕事だと思っています。お金のこと、仕事のこと、親の頑固な態度……どんなことでも構いません。まずは担当のケアマネジャーに、あなたの「しんどい」という本音を吐き出してくださいね。一緒に最善の道を探していきましょう!




