要介護5でも叶う「車椅子でお散歩」!全介助の移乗をラクにするチームケアの力

要介護5でも叶う「車椅子でお散歩」!全介助の移乗をラクにするチームケアの力

ご自宅で大切なご家族の介護をされている皆様、毎日本当にお疲れ様です。 日々の介護の中で、特に負担が大きく「できればやりたくない……」と悩んでしまうのが、ベッドから車椅子への「移乗(乗り移り)介助」ではないでしょうか。

ご自身で動くことが難しい「全介助」に近い状態の方を抱え上げるのは、本当に大変ですよね。 「なんとか日中だけでも車椅子に座らせてあげたい」「外の空気を吸わせてあげたい」という優しい思いがあっても、体力的な限界から諦めてしまっている方も多いかもしれません。

この記事では、私が担当した「要介護5で寝たきりの方」をご自宅で介護されているご家族のエピソードをご紹介します。 これを読めば、「できない」と諦めていた希望を、専門職のチームワークと便利な福祉用具で叶えるヒントが見つかるはずです。 介護の悩みを一人で抱え込まず、私たちケアマネジャーをどう頼ればいいのか、ぜひ知ってくださいね。

移乗介助は危険がいっぱい!「無理」と感じて当然です

ベッドから車椅子へ乗り移る「移乗介助」。 言葉にすると簡単そうに聞こえますが、全介助が必要な方の場合、実は非常に危険を伴う動作です。

  • ご本人様がバランスを崩して転倒・転落してしまう危険
  • 無理な姿勢で抱え上げることによる、ご本人様の皮膚の剥離や関節のケガ
  • 介護するご家族様の重度な腰痛

ご家族が「そんな介助、私にはとてもできない」と思うのは、ごく自然なことですし、正しい判断でもあります。 ご自宅で介護を続けたいという強い思いがあっても、無理をして共倒れになってしまっては元も子もありません。

「大丈夫」の裏にあったSOSと、娘様の本当の願い

私が担当しているケースで、要介護5の寝たきり状態の方をご自宅で介護されているご家族(娘様)がいらっしゃいました。

通所サービス(デイサービス)を利用する日は、お迎えに来たプロの職員がベッドから車椅子、そして送迎車へと安全に移乗を行います。そのため、ご家族様が直接移乗介助をする必要はありませんでした。

しかし、娘様はご自身の手で移乗介助を行っていました。 私は利用者様の身体状況から、「娘様の細い腕で抱え上げるのは絶対に無理がある、危険だ」と思い、訪問するたびに「移乗は大変ではないですか?無理しないでくださいね」と何度も確認していました。 それでも娘様は、いつも笑顔で「大丈夫です」とお答えになっていたのです。

ところがある日の「サービス担当者会議(ケアマネやサービス事業所が集まる会議)」の席で、娘様がふと本音をこぼされました。 「……実は最近、移乗が本当に大変になってきて……腰も痛くて……」

よくよくお話を伺うと、娘様には「お休みの日は、私が車椅子に座らせてあげたい」「天気のいい日は、私が外に連れ出してあげたい」という強い願いがありました。だからこそ、無理をしてでも自分の力で頑張ろうとされていたのです。

専門職の力が結集!「スライディングボード」の導入

普通であれば、ここでケアマネジャーは「危険ですから、ご家族は絶対にやらないでください。通所サービスの時だけ職員に任せましょう」とストップをかけるかもしれません。

しかし私は、今まで必死に介護を頑張ってこられた娘様の「車椅子に乗せてあげたい」という愛情あふれる気持ちを、なんとか安全な形で叶えたいと思いました。

そこで、すぐに専門職のチームを動かしました。

  1. リハビリ専門職・福祉用具担当者に相談: 抱え上げずに滑らせて移乗できる魔法の板「スライディングボード」の導入を検討し、利用者様の状態に合った用具を選定してもらいました。
  2. ショートステイの施設職員に協力依頼: 利用者様がショートステイ(短期入所)をご利用されている期間中に、施設の介護職員から娘様へ、直接スライディングボードの安全な使い方を指導してもらうようお願いしました。

結果として、娘様はプロの指導のもと、短期間でスライディングボードの使い方をマスターされました。 力任せに抱え上げることなく、安全に、そして楽に移乗ができるようになった娘様の「嬉しそうで、ホッとしたような満足げな笑顔」を見た時、私は「これが本当のチームケアだ」と心の底から実感しました。

shin
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また介護ベッドで、座位姿勢(座った状態)の姿勢を維持できるように、角度を90度近くまで調整できる「マルチポジションベッド」というのもあります。姿勢保持が困難な方でも起き上がった状態で過ごすことが可能となるベッドです。

「こんなことできないかな?」は、すべてケアマネに相談を!

ご家族様にとって、介護の世界は知らないことばかりだと思います。 「腰が痛い」「夜眠れない」といったお悩みから、「お風呂に入れてあげたい」「一緒にお墓参りに行きたい」といったご希望まで、どんな些細なことでも構いません。ケアマネジャーに相談してください。

私たちケアマネジャーは、ご本人様やご家族様から相談を受けた時、「それは無理です」と突き放すのではなく、「どうすればその願いを叶えられるか?」を考え、実現可能な支援を検討し、各分野の専門職と連携して形にしていくのが本来の役割です。

今回のように、福祉用具(スライディングボード)とプロの指導(施設職員)を組み合わせることで、諦めかけていた希望が叶うこともたくさんあります。

shin
shin

どうやっても無理なこともあるかと思いますが、少しでも可能性があるなら、私の場合は、まず支援策を検討して多職種を巻き込んでいます。サービス事業所からは「わがままなケアマネ」とも言われたりします(笑)

まとめ

今回は、全介助の方の移乗をめぐる、ご家族の思いとチームケアの実例をお話ししました。 この記事で一番お伝えしたいポイントをまとめます。

【ご家族様へお伝えしたいこと】

  • 力任せの移乗介助は危険!無理だと感じて当然です。
  • 便利な福祉用具(スライディングボード等)で、介護は劇的に楽になります。
  • 「車椅子に乗せたい」「お出かけしたい」という願いは諦めないで!
  • どんな些細なことでも、一人で抱え込まずに必ずケアマネジャーに相談してください。

介護はマラソンのようなものです。ご家族が無理をして倒れてしまわないよう、使える道具(福祉用具)と頼れる人(ケアマネやサービス事業所)をフル活用して、チームで一緒に乗り越えていきましょう。私たちは、いつでもご家族様の味方です。

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