
「自法人の施設に都合よく使われている気がする……」 「利用者のためを思うと、会社の方針に納得できない……」
ケアマネジャーとして働いていると、このような組織と利用者の板挟みで悩むことはありませんか? 日々の業務に追われながら、誰のためのケアプランなのか迷う瞬間は誰にでもあるものです。
この記事では、経鼻経管栄養の利用者が特養のロングショートで経口摂取を回復した奇跡の事例をご紹介します。 自法人の上司と対立してでも「利用者の利益」を優先した結果、何が起きたのか。
この記事を読めば、ケアマネ本来の役割を再確認し、自信を持って日々の業務に取り組めるようになります! ぜひ最後までじっくりお読みいただき、明日からの業務にお役立てください。
結論:ケアマネは組織に忖度せず利用者を最優先すべき
まず結論からお伝えします。 私たちケアマネジャーは、事業所や法人の都合に忖度してはいけません。
なぜなら、私たちの最大の役割は「利用者の自立支援と利益の最大化」だからです。 法人の利益や顔色を優先したケアプランは、結果的に利用者の不利益につながる危険性があります。
たとえば今回ご紹介するケースでも、私は大きな決断をしました。 自法人の特養に入所予定の利用者に対し、「本当は老健(介護老人保健施設)の方が適切である」とご家族に正直に伝えたのです。
結果として上司からは苦言を呈されました。 しかし、この行動が施設側の奮起を促し、利用者の大きな回復につながったのです。 迷ったときは常に「利用者ファースト」で判断することが、最終的に良い結果を生み出します。
特養の「ロングショート」とは?(初心者向け解説)
本題に入る前に、まずは専門用語の解説を少しだけおこないます。 「特養のロングショート」という言葉に馴染みのない方に向けて、わかりやすく説明しますね。
ロングショートとは、本来は数日〜数週間程度で利用する「短期入所生活介護(ショートステイ)」を、長期間にわたって連続で利用し続けることを指します。
特別養護老人ホーム(特養)は、入所待ちの待機者が非常に多いのが現状です。 そのため、すぐには本入所できない方が、お部屋の空きが出るまでの間、ショートステイの枠を使って実質的な入所生活を送るケースが少なくありません。
これがロングショートと呼ばれる利用方法です。 ただし、あくまで制度上は「居宅(自宅)のサービス」という扱いになります。 そのため、施設に入りっぱなしであっても、私たち居宅のケアマネジャーが毎月訪問し、ケアプランを作成し続ける必要があるのが特徴です。

特養(特別養護老人ホーム)ロングショートは、保険者によって申請の方法など違いがあります。また、ロングショートは、特養への入所条件を満たしている必要があります。詳しくは保険者に確認しておく必要があります。
事例紹介:経管栄養から特養ロングショートという難題
ここからは実際の事例を交えて、具体的にお話ししていきます。 今回の利用者は、脳梗塞の後遺症で嚥下(飲み込み)機能が低下した方でした。
【利用者の状態と状況】
- 病院での嚥下テストは不可という判定
- 経鼻経管栄養(鼻から管で栄養を入れる状態)で退院
- 退院後は自法人の特養でロングショートを利用
上記のように、すでに特養への入所が決まっている状態での担当依頼でした。 しかし、ご家族からは「なんとかリハビリをして、また口から食べられるようになってほしい」と強い希望を伝えられていたのです。
私は15年ほど介護の現場を見てきましたが、このケースは非常に難しい判断を迫られるものでした。 医療的なケアが必要な状態で、生活の場である特養へ行くことへのリスクを強く感じたからです。
忖度なし!家族へ「老健」の可能性を伝えた真意
ご家族の強い希望を聞いた私は、ケアマネとして大きな葛藤を抱えました。 リハビリや医療的ケアを重視して経口摂取を目指すなら、特養よりも「老健」が圧倒的に適しているからです。
老健(介護老人保健施設)は、医師やリハビリ専門職が常駐し、在宅復帰を目指すための施設です。 一方で特養は、生活の場としての意味合いが強く、医療的なアプローチは老健に比べて限られます。
しかし、すでに自法人の特養への入所ルートが敷かれています。 私は迷った末、ご家族にありのままの事実をお伝えしました。 「リハビリを強く希望されるなら、老健という選択肢もありました」と。
この発言により、ご家族は特養の管理者に「老健へ移るべきか」を相談することになります。 当然、自法人の上司にあたる管理者からは「余計なことを言ってくれたな」と愚痴を言われました。
それでも私は、一人のケアマネとして正しい仕事をしたと確信していました。 ケアマネの仕事は、利用者を自法人に囲い込むことではありません。 利用者の可能性を広げるために、客観的な事実と選択肢を提示することなのです。

これは理想ですし、本来の姿なのでしょうが、実施は縛りなどで自分の思うようにケアマネジメントができないことの方が多いのかもしれません。現在、国では「ケアマネの中立・公正の担保をどうするか」について検討されていますが、さてどうなりますことやら・・・
【超重要】ロングショート利用時の「食形態」の注意点
少し話は逸れますが、実務上の非常に重要なポイントをお伝えします。 特養のロングショートを利用する際、ケアマネが絶対に注意すべきポイントがあります。
それは「食形態の安全確認」です。 施設入所目的のロングショートであっても、居宅のケアマネがケアプランを作成します。 この時、以下の点に細心の注意を払ってください。
【ロングショートでの注意点】
- 通所サービス以上に嚥下機能が低下している人が多い
- 施設での誤嚥・窒息事故はケアマネの責任も問われかねない
- 担当者会議で施設側と食形態について綿密に協議する
「施設に入ったから施設に任せておけば安心」ではありません。 ケアマネとしてリスクを予測し、安全なケアプランを作成する重大な責任があるのです。
とくに経口摂取を目指すプロセスでは、窒息や誤嚥性肺炎のリスクが常に伴います。 ご家族、施設の看護師、介護職員、そして嘱託医との綿密な連携が不可欠です。
奇跡の回復!施設側の意地と努力が実を結んだ経口摂取
話を事例に戻します。 私が老健を勧めたことが発端となり、思わぬ化学反応が起きました。 特養側もプロとしての意地を見せてくれたのです。
「特養でもやれるところを見せてやる!」 そう言わんばかりに、嘱託医と相談しながら必死に経口摂取へのアプローチを開始しました。
後遺症で発語も少なく、経口摂取は難しいと思われていた利用者様。 しかし、施設職員の懸命な努力により、なんと少しずつ口から食べられるようになったのです!
ゼリー食から始まり、少しずつペースト食へと段階を上げていきました。 現場の介護スタッフたちの「なんとか食べさせてあげたい」という熱意には、本当に頭が下がる思いでした。
もしあの時、私が法人に忖度して黙っていたら、この奇跡は起きなかったかもしれません。 波風を立てたことで、結果的に他職種の熱意を引き出すことにつながったのです。
利用者ファーストを貫くための「時間の作り方」
利用者と真剣に向き合い、時には組織と意見を戦わせるには「心の余裕」が必要です。 そして心の余裕を生み出すのは、日々の業務の「時間的余裕」に他なりません。
私は普段の業務において、効率化のために2台のノートパソコンを同時に駆使しています。 片方でシステムを開きながら、もう片方で書類を作成するなどして、事務作業をスピーディーに終わらせる工夫をしているのです。
そうやって生み出した時間は、利用者のための「考える時間」に充てるべきだと信じています。 事務作業に追われて思考停止してしまうと、どうしても「言われた通りにするだけのケアプラン」になってしまいます。
ITツールやパソコンをうまく活用して業務を効率化することは、結果的に「忖度しないケアマネジメント」を守るための強力な武器になるのです。
板挟みになったときの心の守り方
ケアマネジャーは、常に誰かとの板挟みになる職業です。 法人と利用者、家族と施設、医師と介護職員。 その中で心がすり減ってしまう方も多いでしょう。
そんな時、心の拠り所にしてほしいのは「私たちの顧客は誰か」という一点です。 法人の上司は、給料をくれる存在かもしれません。 しかし、私たちのサービスを直接受け取り、その人生を預けてくれているのは利用者様ご本人です。
上司に怒られるのは一時的なストレスですが、利用者の不利益を見過ごしたという後悔は、ケアマネとしての誇りを一生傷つけます。 だからこそ、迷った時は「一番弱い立場にいる人の味方になる」と決めておくと、心がスッと楽になります。
まとめ:ケアマネの誠実な対応が奇跡を起こす
今回は、忖度しないケアマネの支援がもたらした奇跡の事例をお伝えしました。 最後にもう一度、この記事で重要だったポイントを振り返ります。
【本記事のまとめ】
- 法人の都合ではなく、利用者の利益を最優先する
- ロングショート利用時は食形態の安全確認を徹底する
- ケアマネの誠実な対応が、他職種の熱意を引き出すこともある
5ヶ月後、利用者様は無事に本入所となり私の担当は終了しました。 ご家族からは「あの時、正直に話してくれて本当にありがとう」と深い感謝の言葉をいただきました。
上司には怒られましたが、ケアマネの誇りを守れた良い仕事だったと今でも思っています。 皆さんも、組織との板挟みで迷ったときは「利用者にとって何が一番か」を基準に行動してみてくださいね。
日々の業務は大変ですが、ケアマネジャーは本当にやりがいのある素晴らしい職業です。 これからも専門職としての誇りを胸に、一緒に頑張っていきましょう。



