
ケアマネジャーの皆さま、日々の業務、本当にお疲れ様です。 殆どのケアマネさんは、担当件数40件くらい持たれている、もしかしたらそれ以上のケアマネさんもおられるかもしれませんが、40件も担当していると、利用者様一人ひとりと向き合い、完璧なアセスメントを作成するのは、至難の業ですよね。
「課題分析標準項目23項目、すべて完璧に埋めなきゃ……」 そんなふうに、自分を追い詰めていませんか?
先日、私は「適切なケアマネジメント手法」をテーマにした法定外研修に参加しました。 そこで見えてきたのは、「多くのケアマネが抱える共通の悩み」と、「アセスメントは少しずつの積み重ねで作り上げていけばいい」という、確かな根拠に基づく結論でした。
よく、「しっかりしたアセスメントが必要」なんて、ケアマネ研修では当たり前のように聞かれますが、この記事を読めば、明日からのアセスメント業務が少し楽になり、利用者様とより良い関係を築くヒントが得られるはずです。
2023年10月16日に厚生労働省より、介護保険最新情報Vol.1178にて、「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」の一部改正が通知されています。
一部改正となっていますが、大幅な改正ではないでしょうか。


ケアマネたちが語る「聞けていない項目」
「適切なケアマネジメント手法」をテーマにした研修会に参加する機会があり、「課題分析標準項目23項目の中で、実際には聞けていない(アセスメントできていない)項目は何か」を話し合いました。
担当件数を多く抱えるケアマネたちが抱える、リアルな「聞けていない項目」のベスト(ワースト?)3をご紹介します。
本人の趣味や楽しみにしていること
これは、非常に多くのケアマネさんで共通していました。 ADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作)、病状、介護状況など、生命や日々の生活に直結する情報の収集が優先されがちです。 「時間がない中で、趣味の話までゆっくり聞けない……」 というのが、多くのケアマネの本音でした。
緊急時における、関わっている家族以外の家族との調整
キーパーソンとなる家族との調整は行いますが、「もしその人が倒れたら?」「遠方の親戚は?」といった、緊急時のバックアップ体制まで詳細にアセスメントできているケースは、決して多くありませんでした。 これも、「まずは今の生活を安定させることで精一杯」という現実があります。
口腔清潔に関すること
以外と落としがちなのが口腔清潔に関すること。ご本人やご家族の方に確認すると「歯医者なんか、長いこと言っていない」と言われることが多く、私たちも他の状況に気を取られて、意外と聞き取れていないのかもしれません。
なぜ「一度には無理」なのか?現場の限界
研修に参加した多くのケアマネさんが口にしていたのが、「担当件数の多さ」です。
標準的な担当件数は30から35件程度と言われますが、多くのケアマネさんは、逓減性いっぱいまで持たれているのではないでしょうか。例えば、40件の利用者様に対し、一人ひとりの人生、価値観、家族背景まで、一度のアセスメントで完璧に把握することは、物理的にも、時間的にも、精神的にも不可能です。
逓減性とは、1人のケアマネジャーが担当する利用者の件数が、一定の基準を超えた場合に、介護報酬が段階的に減算されること。
ケアプランデータ連携システム及び事務職員の配置が、「なし」で45件以上で減算、「あり」で50件以上で減算されます。
私自身も、そう思います。 一度にすべてを聞こうとすれば、アセスメントが一問一答、クローズド・クエスチョンのような面接のようになってしまい、利用者様との信頼関係を築くどころか、心を閉ざされてしまうリスクもあります。

面談は、長くても1時間くらいが適切と言われています。あまり長くなると、相手も嫌がるでしょう。逆にもっと話をしたいという家族もいるかもしれませんが・・・。
私の経験では、家族から次々と話をされて、2時間以上というのもありましたが、それはさすがに疲れましたね。
【結論】アセスメントは「少しずつの積み重ね」でいい
研修での議論を経て、私は改めて「アセスメントは少しずつの積み重ねで作り上げていけばいい。むしろ、それが自然な形だ」と確信しました。
利用者様との関係性が深まるにつれて、
- 「実は、昔は絵を描くのが好きだったんだ」
- 「東京にいる息子は、あまり頼りにならないけど……」 といった、本音がポロリとこぼれることがあります。
その瞬間こそが、アセスメントの項目を埋める絶好のチャンスです。 日々のモニタリングや、ふとした会話の中で得られた情報を、パズルのピースを埋めるようにアセスメント票に反映させていく。 それが、真の意味で利用者様を理解することに繋がります。
【厚労省の根拠】少しずつ進めるアセスメントの考え方
「少しずつの積み重ねでいい」というのは、ケアマネの「甘え」ではありません。 厚労省が示している「適切なケアマネジメント手法」の考え方そのものに基づいています。
「適切なケアマネジメント手法」の概念
厚労省が推進する「適切なケアマネジメント手法」では、ケアマネジメントを「一過性の行為」ではなく、「サイクル(過程)」として捉えています。
- アセスメント → プラン作成 → サービス開始 → モニタリング → (再アセスメント)
このサイクルを回す中で、アセスメント情報は常に更新・修正されることが前提となっています。つまり、一度のアセスメントで完璧を目指す必要はなく、「プロセスの進行とともに、情報は深化していく」という考え方です。

厚労省の示すケアマネジメントの基本定義では、アセスメントは初回訪問だけで完成させるものではなく、モニタリングを通じて、利用者の状態の変化に応じて見直すものとされています。
私自身も、初回のアセスメント情報の中身はそれほど多くないですが、回数を積み重ねることに情報量が多くなっていき、保険者から特に指摘されたことはありませし、利用者のことを聞かれたら、しっかり説明できる自身を持っております。
課題分析標準項目の「活用」であって「埋めること」が目的ではない
23項目は、利用者様の状態を包括的に捉えるための「視点」です。 すべての項目を最初から完璧に埋めることが目的ではなく、「これらの視点を用いて、利用者様の自立支援に必要な課題を導き出すこと」が目的です。
優先度の高い課題からアセスメントを進め、信頼関係の構築とともに、徐々に包括的な理解へと繋げていくアプローチは、厚労省の考え方とも合致します。
【実践】少しずつのアセスメントを進める3つのポイント
完璧主義を捨てて、少しずつのアセスメントを実践するための具体的なポイントをまとめました。
「まずは命と生活」優先順位をつける
初回のアセスメントでは、病状、ADL、介護状況など、安全な生活を送るために不可欠な情報を最優先に収集します。 「趣味」などは、モニタリングの中で徐々に聞いていく「中長期的な課題」として捉えましょう。
信頼関係の構築を第一に考える
一度にたくさんのことを聞こうとせず、まずは利用者様の話を傾聴し、信頼関係を築くことに時間を使いましょう。 関係性ができれば、自然と深い情報が得られます。
アセスメント票は「生きている書類」と捉える
アセスメント票は一度作ったら終わりではありません。モニタリングや会話で得られた新しい情報は、その都度、追記・修正していきましょう。 「常に更新されている」状態こそが、質の高いアセスメントです。

私もそうですが、殆どのベテランのケアマネさんであれば、おそらく、面談の前に仮説として「あたり」をつけていると思います。
※あたりとは、「この利用者にはこういう課題があって、このサービスが有効ではないか」とアセスメントの段階で仮説を立てることです。
【まとめ】
今回のポイントを振り返ります。
- 「趣味」や「緊急時調整」など、アセスメントできていない項目は多くのケアマネに共通していた
- 担当件数をたくさん抱える現状では、一度に完璧なアセスメントは不可能である
- アセスメントは「少しずつの積み重ね」で作り上げていけばよい
- 厚労省の「適切なケアマネジメント手法」も、アセスメント情報の深化を前提としている
ケアマネジャーの皆さま、完璧を目指して自分を責めるのは今日で終わりにしましょう。 利用者様と向き合い、少しずつ、少しずつ、その人の人生を理解していくプロセスこそが、素晴らしいケアマネジメントです。 明日からも、利用者様の「生きがい」という、大切なパズルのピースを一緒に探していきましょう。



