
「何度電話しても、県外に住む息子さんが出てくれない」 「やっと繋がったと思ったら、『そっちで適当にやってよ』と冷たく切られた」
ケアマネジャーの皆さん、毎日本当にお疲れ様です。現役主任ケアマネのshinです。 私たちケアマネの心を最もすり減らすもの……それは、複雑な制度でも書類の山でもなく、「ご家族との温度差」ではないでしょうか。
「『困難事例』というのは、本来は支援する側の都合で作られた言葉だ」とよく言われませんでしょうか。私自身もつい口にしてしまうことがありますが、利用者さん本人が困難なわけではなく、「私たちが支援しにくくて困っているだけ」なのだと。 頭では分かっています。でも……「いや、それでも電話にすら出てくれない家族の対応は、本当に困るんです!!」というのが、現場の偽らざる本音ですよね。
今回は、そんな理念と現実の狭間で苦しむケアマネさんへ向けて、私が実践している「非協力的なご家族へのアプローチ法」と、自分自身の心を守るための仕事術をお伝えします。


家族の「あるべき姿」を捨てることから始める
ご家族が協力的でない時、私たちは無意識のうちに「親の介護なんだから、子供が心配するのは当たり前だ」「3人も子供がいるのに、誰も協力しないなんておかしい」と、一般論でジャッジしてしまいがちです。
しかし、まずはこの「家族のあるべき姿(幻想)」を思い切って捨てましょう。
親子の間には、ケアマネには絶対に踏み込めない、何十年という歴史と確執があります。私たちが「家族なんだから協力してください!」と正論をぶつけても、相手の心を頑なにさせるだけです。 「このご家族には、距離を置かなければならない理由があったんだな」と割り切り、『家族の絆を取り戻すこと』を私たちの支援目標から外すのが、最初のステップです。
実践!非協力的な家族への「3つの仕事術」
では、具体的にどうやって同意を得たり、連絡を取ったりすればいいのか。私が実践しているリアルな仕事術をご紹介します。
① 連絡手段を「電話」から「書面(手紙)」へ切り替える 仕事中や休日にケアマネからかかってくる電話は、遠方のご家族にとって「何か悪い知らせだ」「お金を請求される」という強烈な心理的負担になります。 緊急時以外は、月に1回、簡単な近況報告と返信用封筒(切手付き)を同封した手紙を送りましょう。「読んだらチェックだけして返信してください」という形にすると、意外と返事が返ってくることが多いです。

近くに住んでいるご家族でも、非協力的で電話にもなかなか出てくれない、留守が多い場合には、手紙を書いてポストに入れるようにしています。また、地域包括支援センターにも相談し、現状をしってもらうことが大切です。私の地域の地域包括支援センターでは、一緒に訪問もしてくれます。
② 魔法の言葉「〇月〇日までにご連絡がなければ…」 サービス変更の同意などがどうしても必要なのに、電話にも出ず、書類も返ってこない場合。私は手紙にこう記載して簡易書留で送ります。 「〇月〇日から〇〇のサービスを導入したいと考えています。もし反対のご意見がありましたら、〇月〇日までにご連絡ください。ご連絡がない場合は、ご了承いただいたものとして進めさせていただきます」 これは「消極的同意(オプトアウト)」と呼ばれる手法です。ご家族に「何もしない(連絡しない)=同意する」という逃げ道を作ってあげることで、物事がスムーズに進むことがあります。

私の事業所は3人ケアマネで、いつも相談し合えるというのが利点ですが、一人ケアマネさんの場合は、地域包括支援センターに相談されるのが良いですし、殆どの方はそのようにされていると思います。
③ 「ケアマネの自己防衛」としての記録の徹底 「〇月〇日 〇時〇分 長男へ電話するが留守電。折り返しなし」 「〇月〇日 手紙を送付」 これらを支援経過に克明に記録してください。将来、もしご家族から「勝手なことをされた!」とクレームが来た時の、あなたを守る最強の盾になります。

記録はエビデンスとなりますので、自分を守るためにも必要ですよね。
「地域ケア会議」は、愚痴を言う場所ではなく「責任を分散する場所」
いくら手を尽くしてもどうにもならない時、私たちの地域では「事例検討会」や「地域ケア会議」にケースを上げます。
ここで大切なのは、「家族が冷たくて困っています」と愚痴をこぼすことではありません。 「私はここまでやりましたが限界です。行政や地域の皆さん、一緒に責任を背負ってください」と、公的な場にパスを出す(責任を分散させる)ことです。
必要な場合は、行政と連携して「成年後見制度」の申し立てを視野に入れるなど、ケアマネ個人の責任から「地域・社会の責任」へとフェーズを移行させましょう。一人で抱え込む必要は全くありません。
あなたは「冷たい家族の身代わり」ではない
- 家族の絆を修復しようとしない(課題の分離)。
- 電話ではなく「手紙」と「消極的同意」を賢く使う。
- 記録を徹底し、地域ケア会議で「責任を分散」させる。
「子供が何もしてくれないから、私がこの人を守らなきゃ」と、ご家族の身代わりになろうとする優しいケアマネさんほど、心を病んでしまいます。そんな私もそんな一人で、先輩ケアマネから励まされます。
「困難事例」は、支援者側の都合で作られた言葉かもしれません。でも、あなたが困っているのもまた、紛れもない事実です。 プロとしての線引きをしっかり行い、様々なツールや地域の力を使い倒して、あなた自身の心と時間を守ってくださいね。一緒に乗り切りましょう!


